眠れない・眠りが浅い・
日中も眠い
「最近よく眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝起きても疲れが取れていない」-このような睡眠の悩みを抱えていませんか?
睡眠は私たちの心身の健康を保つために欠かせない生理現象です。しかし、現代社会では約5人に1人が何らかの睡眠の問題を抱えているといわれています。睡眠障害は単に「眠れない」だけでなく、日中の活動や生活の質に大きな影響を与え、放置すると様々な心身の不調につながる可能性があります。
睡眠の問題は、ストレスや生活習慣の乱れだけでなく、背景に別の疾患が隠れていることもあります。この記事では、睡眠の悩みについて、その背景にある症状や原因、そして考えられる病気について解説します。
他にこのような症状は
ありませんか?
睡眠障害と一緒に現れやすい症状をチェックしてみましょう。これらの症状の有無は、原因となる疾患を見極める重要な手がかりになります。
精神面の症状
- 気分の落ち込み、憂うつ感
- 不安感、緊張感、イライラ
- 意欲や興味の低下
- 集中力・記憶力の低下
- 死にたい気持ち(希死念慮)
身体面の症状
- 頭痛、頭重感
- 動悸、息苦しさ
- 食欲の変化(食欲不振または過食)
- 体重の変化
- 疲労感、だるさ
- 便秘、下痢などの消化器症状
睡眠に関連する特徴的な症状
- いびき、睡眠中の呼吸停止
- 脚のムズムズ感、不快感
- 睡眠中の異常行動(寝言、歯ぎしり、手足の動き)
- 悪夢、金縛り
- 日中の強い眠気、居眠り
「眠れない」を
引き起こす原因
睡眠の問題は、一つの原因だけでなく、複数の要因が複雑に絡み合って生じることが少なくありません。
- 心理的な原因:仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、将来への不安などのストレスは、交感神経を興奮させ、心身を緊張状態にして寝つきを悪くします。また、うつ病や不安症といった心の病気が背景にあることも多いです。
- 身体的な原因:睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群のように、睡眠そのものを妨げる病気が原因の場合があります。その他、アトピー性皮膚炎によるかゆみ、関節リウマチによる痛み、夜間頻尿なども睡眠を妨げる原因となります。
- 環境的な原因:寝室の騒音や明るさ、暑すぎ・寒すぎといった不適切な睡眠環境は、眠りの質を大きく低下させます。枕やマットレスが体に合っていないことも原因の一つです。
- 生活習慣の原因:夜勤などによる不規則な生活リズム、就寝前のスマートフォンやPCの利用(ブルーライトの影響)、カフェインの過剰摂取、アルコール(眠りを浅くします)やニコチンの摂取などが挙げられます。
主な疾患(鑑別)
睡眠障害の症状や原因によって、考えられる疾患は異なります。ここでは代表的な疾患と、それぞれの睡眠障害の特徴、簡単な治療法について説明します。また、身体的な原因、環境的な原因、生活習慣の原因がある場合は、それらの改善も行います。
不眠症
症状の特徴
寝つきが悪い(入眠困難)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)、ぐっすり眠った感じがしない(熟眠障害)といった症状が続き、日中の倦怠感、意欲低下、集中力低下などの不調が現れる状態です。原因はストレス、生活習慣の乱れ、精神疾患、身体疾患など様々です。
治療法
睡眠衛生指導(生活習慣の改善)に加えて、薬物療法を検討します。また、原因となっている精神疾患や身体疾患があれば、その治療も並行して行います。認知行動療法(CBT-I)も有効な治療法の一つです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
症状の特徴
睡眠中に呼吸が一時的に止まったり、浅くなったりすることを繰り返す疾患です。大きないびきや日中の強い眠気、起床時の頭痛などが特徴です。肥満や顎の形状などが関与していることが多いです。睡眠中に何度も呼吸が止まるため、脳が覚醒しやすく、眠りが浅くなります。本人は無呼吸に気づいていないことも多いですが、熟眠感が得られず、日中に強い眠気を感じます。
治療法
CPAP(シーパップ)療法という、鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道の閉塞を防ぐ治療法が一般的です。その他、マウスピースの装着や、原因と重症度によっては外科手術を行うこともあります。生活習慣の改善(減量、禁煙、節酒など)も重要です。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
症状の特徴
主に夕方から夜間にかけて、脚(時には腕などにも)に「むずむずする」「虫が這うような」「ピリピリする」といった不快な感覚が現れ、脚を動かさずにはいられなくなる疾患です。じっとしていると症状が悪化し、動かすと一時的に楽になります。脚の不快感のために入眠困難になったり、睡眠中に目が覚めてしまったりします。
治療法
鉄分不足が原因の一つと考えられており、鉄剤の補充を行うことがあります。その他、ドパミン作動薬や非ドパミン作動薬などの薬物療法が有効です。生活習慣の改善(カフェインやアルコールの制限、適度な運動など)も推奨されます。
概日リズム睡眠・覚醒障害
症状の特徴
体内時計のリズムが乱れ、望ましい時刻に睡眠・覚醒することが困難になる状態です。以下のようなタイプがあります。
- 睡眠相後退型: 深夜にならないと眠れず、朝起きられない。
- 睡眠相前進型: 夕方早くに眠くなり、早朝に目が覚めてしまう。
- 非24時間睡眠・覚醒リズム型: 睡眠と覚醒の時間が毎日少しずつ遅れていく。
- 不規則睡眠・覚醒リズム型: 睡眠と覚醒のパターンが不規則で、まとまった睡眠がとれない。
治療法
高照度光療法(朝に強い光を浴びる)、メラトニン受容体作動薬、時間療法(就寝時刻を少しずつずらしていく)などが行われます。規則正しい生活習慣を確立することも重要です。
うつ病・適応反応症(適応障害)・双極症(双極性障害)
症状の特徴
気分の落ち込みや意欲の低下などを主症状とするうつ病や適応反応症、うつ状態と躁状態を繰り返す双極症では、睡眠障害が高頻度に見られます。
睡眠障害の特徴
- うつ病・適応反応症: 入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害など、様々なタイプの不眠が現れます。逆に、過眠(寝過ぎてしまう)が見られることもあります。
- 双極症: 躁状態の時は睡眠時間が極端に短くても平気になったり(睡眠欲求の減少)、うつ状態の時は不眠・過眠になることがあります。
治療法
抗うつ薬や気分安定薬などによる薬物療法と精神療法が中心となります。睡眠障害に対しては、睡眠薬を併用することもありますが、まずは原因となっているうつ病や双極性障害の治療が優先されます。
不安症(不安障害)
症状の特徴
全般性不安症、パニック症、社交不安症など、過度な不安や恐怖を主症状とする疾患群です。不安や緊張感から寝つきが悪くなったり(入眠困難)、夜中に目が覚めて不安なことを考えてしまったり(中途覚醒)することが多く見られます。悪夢を見ることもあります。
治療法
抗うつ薬(SSRI・SNRIなど)や抗不安薬による薬物療法、認知行動療法などの精神療法が行われます。リラクゼーション法(呼吸法、自律訓練法など)も不安の軽減と入眠の助けになります。
まとめ
睡眠の悩みは、単に「眠れない」という問題だけでなく、その背景に心や体の様々なサインが隠されています。もし、あなたの睡眠の問題が長く続いている、あるいは日中の活動に支障が出ていると感じるなら、それは専門家への相談を考えるタイミングかもしれません。